「ミステリーって現実にはありえないよね。」
「身近なところで起こるこんなミステリーなら、どう?」
ミステリーというジャンル、実はあまり手に取ったことはありません。
苦手な訳でもないのですが、あまり手にとってこなかった中、久しぶりに手元にやってきた友人からのお薦め本が、名取佐和子さんの『図書館のはこぶね』でした。
図書委員の代打から始まるミステリー
高校生の女の子が主人公のこちらのお話。彼女は3年生で、バレーボール部の引退前に足を怪我してしまい、引退試合にも出られず、高校最後の体育祭を前にして、見学が決定しています。
そんな彼女は、ひょんなことから友達の図書委員の仕事の代打を依頼され、そこで一つの謎に出会い、その謎解きを通じて何人かの人々と出会い、物語は進んでいきます。
その謎とは、図書室に10年ぶりに返却されたケストナーの『飛ぶ教室』。そして、この本を借りた高校生は10年前に事故で死んでいる。返されるはずのない一冊が、なぜ図書室に返却されたのか?それは、誰が返却したものなのか?
彼女はこの謎解きを通じて、モノの捉え方や誰かの気持ちをよりしっかりと捉えられる一面をどんどん成長させていきます。
ここもこの本の魅力だと思いますが、私が一番の魅力だと感じたのは、登場人物の誰もが(ほとんど全員が)それぞれに芯をもっている人ばかりなところ。
それが故に、主人公は葛藤し、成長できたと感じました。
必要だったことと必要なこと
過去のこうあるべきには、確かに価値があり、大切にされなければならない部分は時代が流れても存在します。
しかし、時代の流れの中で、それらに新しい解釈がつけられたり、今を生きる人をないがしろにしかねない要素に気がついてしまったら、意見し、議論して、よりよい形を生み出すことは、健康的な集団を維持する必須の仕組みです。
もちろん、ただぶっ壊せばいいということではありません。
それを再確認できる、いいミステリーでした。読後感がとても爽やかな、友人と同じになってしまいましたが、私もお薦めの一冊です。
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